日本語ではバーチャルとしてすっかり定着している言葉ですが、主に仮想の世界とか、コンピューター・ゲームで使われているようです。英和辞書を引くと”実際は”とか“事実上は”などと載っていて、えーっ!日本語でよく目にする “仮想的” という意味とは真逆だ。同じ言葉なのに全然違う意味を持つってどうゆうこと?
これは、下衆(げす)の勘ぐりですが、コンピューターというか IT 世界の功罪ではないでしょうか。オックスフォードのオンライン辞書によると、「仮想的」という意味は二義的で、コンピューターのソフトウェアが作り出した世界あるいは物としています。
コンピューターの世界では
IT でこの言葉を使用する以前にあった本来の意味は、「見かけ上はともかく実際は」ということらしいです。コンピューターの発展の歴史の中で、昔、virtual memory バーチャルメモリという技術が考案されて導入されたときに、頭脳明晰かつ成績優秀なコンピューター技師達がそう命名したそうな。実メモリーが足りなくなったときに、外部記憶装置などに実メモリーの内容を一時的に書き出して、実メモリーが実際よりたくさんあるかのような動きをする技術だそうです。今では、当たり前の技術で、わざわざそんなことを言う人はほぼ皆無でしょうが、当時は「仮想メモリー」という日本語が当てられて、超新技術として、もてはやされたらしい。その後、コンピューターというか IT の世界は「仮想的」という意味で、バーチャルな世界を発展させていったようです。
さてこの相反するような意味を持つ virtual ですが、本来の意味で使用することがあっても、それほど使用される頻度が多くないので、現在ではコンピューター関連のニュースなどで、仮想的と使われることの方が目にする機会が多いかもしれませんね。
バーチャルでは発音を間違ってます
発音する時は、バーチャルでは、ネイティブには通じないことがあるかも。英会話学校のネイティブ先生は分かってくれる確率が高いですが、月謝を払っていないふつうのネイティブにはバーチュアルとアの音を少し入れないと virtual とは聞こえないこともあるような。実際の発音はオックスフォードオンライン辞典で確かめて下さいね。毎度ながら、イギリス英語とアメリカ英語の両方が確かめられます。
コンピューター出現以前の Virtual を使う例
こうした言葉を本来の意味で使用するのは、英語でもレベルが高いと響くらしく、ネイティブの人からは「よくそんな難しい言葉を知っているなー」という目を向けられ、感心されることもありますよ、きっと。保証はできませんけどね。
She is going to marry a virtual stranger.
彼のことを、本当は、よく知らないのに結婚するつもりだ。見かけは恋人同士みたいだけど、実際には赤の他人同然の人、・・・・この stranger は、ゲームの中にでてくる人のことじゃありませんよー。念のため。でも、virtual Tom とかいえば、ゲームの中とか仮想的なトムさんになりますかね。こんがらがらないでくださいね。
Blizzard deals wintry smack to Maritimes, bringing region to virtual standstill (Ottawa Citizen Jan 03, 2014)
ブリザードがマリタイム(カナダ東海岸の沿海州地方)を襲い、冬の平手打ちをして(災害をもたらし)、地域を見かけ上はともかく実際には封じ込めて孤立させた。オタワシティズンという実際の新聞の見出しです。Virtual の意味を出すためにガチガチ直訳してみました。