ン と ング のミステリアスな関係 (Ping-pong?)
日本語の中にあって N の音の存在は、はっきりとした地位を確保しているようには思えないのです。日本橋は 『にほんばし』 なのに、ローマ字表記では『 Nihombashi 』 と『 n 』 ではなく『 m 』に置き換えられたりしています。確かに英語表記では、b とか p の前では m とするようです。大阪市にある日本橋(にっぽんばし)はどんなローマ字表記をしているのでしょうか。市営地下鉄では M 、街の案内などは N ですね。 大阪らしく Ponbashi もありなようです。
あ東京には他にも有名な地名で、新宿という繁華街があります。『しんじゅく』と言うときは、意識しなくても N の音できちっと『ん』といいます。しかし、日本語の中では多くの場合、 N を ng とする方が好まれるようです。昔の東京訛りでは『しんじく』と言っている人がたくさんいましたね。『しんじく』というときは、『 N 』ではなく、『 NG 』の音になります。N を ん として、もっと大切に取り扱っていただけませんかというお話です。
まずは、偉そうで申し訳ありません
英語を話すときに次の単語を意識的に区別していますか?(かなりの上から目線?)
sin sing thin thing pin ping tin ting son song ton tong rain raining ・・・ などなど
ここでのポイントは、N と NG を明確に区別して発音しているかどうかです。(また上から目線!)
いろいろと世の中に出回っている英語の参考書や辞書などによると、英語の n は、舌を上顎に付けた音で、ng は舌を上顎に付けていない音だとか。
あアメリカでの話ですが、私はネイティブの人と話していて、よく、あなたは ping-pong English だと言われました。要は n も ng もみな ng の音で話していたからです。ネイティブの人は、最初は戸惑いますが、やがてこの人は ping-pong なのだと分かってくれるので、問題はありませんでした。私たちも、外国人がしゃべる日本語がおかしいと思いつつも、頭の中でしっかり修正して聞くのと同じことかもしれないですね。
ここでご注意申し上げておきますが、私の英語を ping-pong と言ったからといって、これは正式な英語の表現ではありません。あくまでも、その人の個人的な表現ですから、一般的に日本人の英語は ping-pong だとかは言いません。言語学的な表現では nasal として日本人に共通の accent (訛り)として紹介されたり議論されているようです。
Ping Pong を抜け出すには
日本語で「不倫」というとき、英語表記だと「furing」と聞こえたりするようなのです。日本語でも n をはっきりとだすには、フランス語みたいな表記にするといいかもしれません。イボンヌとかソルボンヌとかに真似て、「フリンヌ」。ヌは飲み込むというか音に出さないようにします。で、自分でも n と ng を区別して発音すれば、当然、相手が sin と言っているか sing と言っているか、やがて聞こえてきますよきっと。保証はできませんが。
英語を話す時は n と ng をはっきりと区別しなきゃだめ?
そんな疑問を持つ前に、とりあえず、お気楽な歌でも聞いてください。お題の N にちなんだ曲です。タイトルもお気楽な na na na na hey hey hey goodbye というやつで、あいつに別れのキスをして来いよという内容です。なんか、高校野球の応援歌にも使えるというか、すでに使っているかもしれません。画像は、デカいアメ車が走り回っていたころの Good Old America の時代。歌詞に興味がある人は、YouTube で with lyrics というのを探してください。
何もムキになって区別しなくても、私の場合、ping-pong と言われてただけで、日常の仕事や生活では、ほとんど問題はありませんでした。N にも敬意を払っていただけたらと、書くだけちょっと書いてみたまでです。
それにしても、日本語には鼻濁音というのがあり、学校と小学校、中学校では「が」の音が違うのです。大昔、「東」は「ひんがし」と発音していたこともあるらしく、この辺が起源かも知れません。日本語が美しく響くためだと説明されたことがあります。「ひんがし」の「ん」を飲み込むように音に出さないのが鼻濁音となるのでしょうか。この鼻濁音は、英語表記が難しいですが、無理に書けば ng となるのでしょうかね。NHK を代表格にすべてのアナウンサーはこれをマスターしなくてはならないのですが、同じ「が」の音がいろいろあって、日本語に慣れていない外国人が聞いたらさぞかし混乱して、日本語は難しいと感じることでしょう。
それでも必要な時もあるんです
さて、n と ng を明確に区別することが、話し言葉としての英語に、必須だとは言い切れないにしろ、必要な時があるかもしれません。私の個人的な印象では、特に必要かな思われるのが、数の勘定をする時です。私が注意された ping-pong English の典型的な特徴は、数字の13 ~19 までにあります。これらの数字を発音する時 n と ng をきちっと区別して出さないと、ネイティブの人には、13 だか 30 だか間違えやすいようです。14 も 40 と、15 は 50 と、という具合です。15 は fifteen で 50 はfifty ですから問題がないようなのですが、音に出す時は 15 の場合 teen にアクセントを置いて n できちっと止めないと、15 なんだか 50 なんだかネイティブの人は混乱するようです。私もよく Do you mean fifteen or fifty? とか、13 or 30? なんて、常に確認されてました。お金の絡む仕事や金勘定で間違えると大変なことになりますからね。ゼロの数が多いほど問題も大きくなりますからね。そんな風に確認されたときは、13 なら指を使い 1 の次に 3 を出し、one three と声に出していました。30 なら言うまでもなく 3 を出して、声は three zero と言ってました。ビジネスの場合は、必ずメモ用紙などに書いて確認することが必要かもしれません。外国で買い物をするとき、ふらっと寄った店などでは、正札がついていても、実際の値段はわからないことがままありますよね。金額が大きいときは、やっぱりメモ用紙などに書くのが良いかもしれません。
音で確かめるには、ネット上の辞書サイト(Oxford, Collins, Webster など)を利用するとよいかもしれません。
Ping Pong でもいいじゃないか
実は、東京あたりでの電車の車内放送では、英語の案内は外国人、それもネイティブの人が多いのですが、東京メトロの最近の車内放送の英語案内は、日本人の人がしているのがよく分かります。とてもきれいな発音なのですが、駅の番号 N14 などは、聞いていると確かに 14 だか 40 だかはっきりしません。 N の音をきちっと出していないためです。でも、私の個人的な感想は、これでもよいと思います。案内の表示画面には N14 と出ますし、ネイティブの人なら Ping-pong English で日本にいる実感がして、おもしろいと思うかもしれません。念のために付け加えさせていただきますが、これは決して皮肉で言っているわけではありませんよ。
車内放送とか外国人の友達や仲間としてワイワイやるときには、日本語の訛りとしてチャーミングに聞こえるかもしれない Ping-pong English ですが、いったん仕事とか商売となると、情報が間違って伝わらないように、メモ用紙などに数字を書きながら話をするくらいの注意が必要な時もあるかもしれません。