はるか昔ヒットしたポップソングです。歌っているのはサルバトーレ・アダモ。もともとはフランス語で歌っていますが、世界的に大ヒットしたためでしょうか、英語のほかにもいくつかの言語でのバージョンがあるようです。ここで紹介するのは本人が歌っている英語バージョンです。インターネット上にはフランス語の歌詞を各国語に翻訳して解説しているサイトも多数あります。(ついでに、アダモはこんな歌も歌っていました。)
ここで紹介したい理由は、この歌の中には、歌がヒットした『はるか昔』と殆ど変わっていない『今』の 厳しい世界情勢、特に中東あたり、 があるからです。英語版を選択したのは、このブログが英語を扱っているからという単純な理由です。英語で似た表現に (It’s ) god’s will というのがあります。使い方はネガティブ表現で「あ~あ、仕方がない」みたいな感じです。原語のアラビア語では「神様の意思があればね」という、ネガティブにもポジティブにも使えるようです。英語でもそうですが、原語でも宗教上の神様とは全く関係ないような使い方です。アダモの歌はもう一歩踏み込んで、神様にお願いするような内容です。英語版の YouTube に、管理人の勝手な解釈を追加して・・発車しまーす。駆け込み乗車は危険です、他のサイトへ行きましょう・・・・・・
I saw the Orient and its treasures with a moon as a banner
国旗に月が描かれている東方の国々(イスラム教を崇拝する国々)を旅行しました。たくさんの貴重な文化遺産を鑑賞しました。英語で Orient というと、英語辞書により中国や日本などの東アジアを指していたり、広くアジア全体を指していたりいろいろです。ここではいわゆる中近東(トルコ、シリア、レバノン、サウジアラビア、イラン、イラク、エジプトなど)を指していると思います。
I intended in a few verses, to put its splendor into a song.
そのすばらしさを数行の歌にしようと思いました。
But when I saw Jerusalem, a lonely poppy on the rock, I heard the sound of requiem when I held it in my hand.
エルサレムを訪れたとき、そこに見たものは、岩の上(過酷な環境)で必死に咲く孤独なケシの花でした。その花を手に取るとレクイエムが聞こえてきました。
Oh little chapel, don’t you see? When you whisper “Peace on Earth”, little birds fly away with fear when they hear the chant of guns,
小さな教会よ、あなたには見えていないのですか?”地上に平和を”と祈りを呟いても、銃声が一斉に響き渡るたびに、鳥たちは飛び去ってしまいます。拡大解釈して、鳥は白い鳩とします。オリーブの枝をくわえたやつです。分かりやすく意味もよく伝わると勝手な解釈です。
(アダモはchant をシャントと歌っていますが、英語の発音はチャントです。ここで確認できます。フランス語では ch は sh の音になるからでしょう。ついでに書くと、アメリカの大都市シカゴの綴りは Chicago です。英語でチカゴと発音しないのは、昔その地区がフランス人によって開拓されたことを示しています。アメリカは、1803 年に、フランスからアメリカ大陸中西部に広がる広大な領土を購入して、アメリカに編入しました。アメリカ史では Louisiana Purchase といわれています。旧フランス領地域ではフランスの名残りがみつかるかもしれません。しかし、200年以上も昔ですからね・・・。現在のルイジアナ州はそのほんの一部です。あっ、ご注意しておきますが、 Chicago はフランス領 Louisiana の中ではなく、それより東にあります。)それと、お気づきですか?この歌のタイトルは Inch’Allah (仏語表現)ですが、英語の綴りは Insh’Allah です。
The road will lead you to the fountain where you’d like to fill your jug
水を汲みに行くとき、泉へと続く道がある。
But, you better stop Mary Magdalena, for them her body ain’t worth water
でも、マリー・マグダレーナが行くのは止めた方がいい。彼らにとり、彼女の命は泉の水にも値しないのだ。マリー・マグダレーナは聖書の中ではマグダラのマリアです。イエスと泉で出会うという話とかけていると思います。彼らとは、ユダヤ系でない人たちのことでしょうか。
Insh’Allah,
The olive tree is crying its shadow, its tender friend and tender wife who are lying in the ruins captive on the enemy side.
オリーブの木が自分の木陰を嘆いている。友人や妻が敵の領域に捕らわれの身となって、瓦礫の中に横たわっているからだ。(平和の象徴であるオリーブの木が泣いている)。 who is lying と歌っていますが、複数形の間違いではないかと思います。もちろん単数形でも意味は通じます。
On the thorn of the wire, a butterfly was seeking a rose, saying to himself “people are so mad, they will kill me if I ever dare”.
敵との領域を分ける鉄条網に蝶々がとまっている。向こうにあるバラの花をさがしているが、独り言を呟いている。みんな気が狂っているから、こちらの土地からから向こう側の敵地へと飛んでいったら、蝶々の私でさえ殺されるかもしれない。
Lord of heaven, lord of hell, you are where you like to be. But don’t you see the hungry people? Don’t you hear the children cry?
天国の神様も地獄の神様も、自分が行きたいところにだけに現れる。今、ここで飢餓に苦しむ人々が見えていないのですか?子供たちの泣き声が聞こえていないのですか?
Insh’Allah,
Is our life a crucifixion? Must we suffer through the years? Just an endless genuflection, washing blood away with tears?
私たちの人生は十字架に磔けにされて、年々苦しむばかりなのですか?泣きながら血を洗い流すために、未来永劫、神様の前にひざまずいていなければならないのですか?
Yes I saw Jerusalem, a lonely poppy on the rock. I always hear that requiem singing in my troubled mind.
岩の上に咲く一輪のケシの花のようなエルサレムを旅しました。あのときに聞こえたレクイエムが今も私の混乱した心の中に響いています。
Requiem for six million souls who don’t have their marble graves. And whoever grove the sand, they are now six million trees.
このレクイエムは、6百万人もの魂のため、しかも大理石の墓石をもつこともない人々のために捧げられています。戦場となった地面を通った人は誰であれ、今や6百万本のオリ-ブの木になって平和を望んでいます。(ここでいう”木”とは、オリーブの木だと解釈しています。オリーブの木は平和の象徴です。)
Insh’Allah,
人間の世界ではなぜか戦争が絶えません。大きな世界大戦から何も学ばなかったかのように、軍備の拡大や地域の戦争がなくなることはありません。特に、中東や中近東と呼ばれる地域では、内乱やタリバン、イスラム国といった歴史の流れの中に翻弄されていました。何が正義か、誰が正しいのか、それぞれの勢力が主張していますから分かりにくいです。動物の世界では、生存のため他の種類の動物を餌食にすることがあるようです。優れた脳をもって築いてきた文明社会に住んでいるはずの人類は、生存に必要な食料にするために人間同士が戦っている訳ではないでしょう。
それでも人類は過去の大きな過ちから学んでいることもあるようです。第二次大戦以来、ナチに牽引された、かつてのドイツのような国は出ていません。戦前の日本に似た、狂信的な国民を育てるような政治家は、残念ながら時折いるようです。しかし、どんなに紛争が大きくなっても、原子爆弾で決着をつけた戦争は1945年以来ありません。世界もそれを良しとしなかっただけでなく、日本の悲惨な経験や日本から発している平和の大切さを世界が理解しているからかもしれません。
Insh’Allah の英語の意味というか解釈は If Allah wills it. だそうです。「アラーの神の思し召しがあれば、」ということでしょうか。しかし、地球上に生息している人類が崇拝する神様はアラーだけではないのですから ・・・・ いくらアラーの神に意志があっても難しいのでしょうか?
最後に、この歌が大ヒットした時、アラブ諸国は素早く動いて、反アラブ的だとして放送禁止にしたとかです。日本でも時々ありますよね、例えば昔のイムジン河とかですかね。